「成功」という邪魔者。

2月も終わるころになって、配属先ではようやく昨年の総括を始めた。
どこの報告書でも、会議でも出てくる報告は一緒。


「**のプロジェクトは大成功に終わった。」
「**の企画が実現され、子どもたちも一日を楽しんだ。」
「日本からのボランティアも入り、一層充実している。」


鬼の、成功率100パーセント。
これは配属先に限ったことではなくて、
どこの国際支援組織のレポートを見ても、
「失敗例」や「ごめんなさい、うまくいきませんでした」
のレポートを見つけることは困難だろう。
これらの団体は、多くの場合「よそ様のお金」や「国民の血税」を「お預かりして」活動している。
「すみません、全然結果が出ませんでした・・・」
なんて報告したら、来年、何も集まらない。
責任者の管理能力も問われる。
だから、アフリカの農村で起こってることなんて誰も知らないってこともあるし、
無数の成功報告をしちゃって、さらなる支援をお願いするのだろう。

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本当の成功率が何パーセントかってことには、興味ない。
それよりも「100%の成功率」が奪っているものの方が心配だ。
それは、【どうしたら次はうまくできるだろうか】
ってみんなで頭つかって、意見出し合って、考える機会だ。

***

国際協力の分野は経験や知識が豊富な人があふれているのだから、
そんなときに「知恵」を提供してくれる人はたくさんいると思う。
でも、何をどう失敗したのかぐらいは最低報告しないと、
知恵を集めることさえできない。


そして、そういう報告を集めるためには、
「上手くいかなくてもいいから、やってみろ。
失敗したら、そこから。
話し合って、改善して、またやってみればいい。」
という支援者、納税者の心の広さが必要なんじゃないかな。
だからJICAやNGOの事業が必ずしも上手くいっていないなら、それはチャンスだ。「当初と話が違うじゃん・・・」「税金の無駄遣いだ」
と全てを切り捨てる前に、
次にどうすればいいかを考えてくれる人が増えるだけで、
きっと世の中はもっといい方向に回りだすと思う。


隊員の仲間にも、NGOの中にも、
自分の失敗をちゃんと前に出している人たちはいる。
本当の成功を生み出すサイクルは、そこにいるはずだ。